決意は固いよ

情深深雨矇矇

2015年09月02日 12:26



 メレッサは言ったが。
「私はメレッサ王女以外には降伏しません」
 彼は強硬に断る。私にメレッサ王女を名乗れと言っているのか。でも、それは無理だ、名乗ったら謀反になる、娘でも父から処刑されるだろう。
「私は謀反を起こす気はありません。私はメレッサ.タイレムです」
 はっきり言った。ミネーラは20年前に滅んだのだ、そんな亡霊を引きずっていてもしょうがない。
「では、先ほどの降伏条件で降伏します」
 ミラルス王は直立の姿勢をとった。彼のうだった。
「わかりました、その条件で結構です」
 彼を処刑しなければ、この条件でも結果は同じことになる。
 作り直した降伏文書にミラルス王は署名した。
署名式が終わって、メレッサは控え室に戻ってきた。セラブ提督やコリンスも一緒だ。
「ミネーラの事をもっと詳しく教えて下さい」
 自分の事なのに、なぜ私だけ知らないのか、腹が立つ。
「ミネーラ王家は20くらいの星を従えた小さな王家です。皇帝の攻撃を受け王族は母君を除いて全員死んだと聞いております」
 そんなひどい事があったのか。
「その事は誰でも知っていることなんですか?」
 あの会場の中で私だけが知らなかったなんて、ひどい話しだ。
「たぶん、みんな知っていると思います。ただ、微妙な話ですので、姫君の方から話題にしない限り、この話を姫君にする者はいないと思います」
 それで、私はこの話にまったく気がつかなかったんだ。
「ただ、庶民の間では、メレッサ姫が宮殿の中で力を増すにつれてミネーラ王家再興の可能性が出てきたと期待されています」
 ふと、ミラバ艦長が言った事を思い出した。彼はこの話をしていたのだ。
「ミネーラが再興される可能性はあるんですか?」
 メレッサには疑問に思えた。20年も前に滅んだのに。
「もし、姫君が帝国を引き継がれたとしたら、姫君のお心次第となります」
 心臓がドキンとなった。そうなんだ。その時は私が決められるんだ。もし、ミネーラを再興したら母が喜ぶだろうなと思うとうれしかった。母の悲願だったにちがいない。
 『悲願』で父が言った言葉を思い出した。
 そうか、指揮権の継承の話をした時に父が言っていたのは、この事だ。まさか私がミネーラの事を知らないとは思っていなかったんだ。では、父の話ではミネーラはすぐにでも再興されるのかもしれない。しかも、そこが私の王国になる。
 母の国ミネーラ。ミネーラってどんな国だったんだろう。
「ミネーラ王国って、そんなにいい国だったんですか?」
 メレッサが聞くとセラブ提督はちょっと考えている。
「昔の事で私もよくは知らんのですが、普通の王国だっただろうと思います。ただ、今の生活の辛さが期待となっているのでしょうな」
 貧しい暮らしを知っていて、かつ王家の血を引いている、それが私の人気の秘密だったのだと、やっと理解できた。
 ミネーラを滅ぼしてそこの王女を略奪し、その王女に子供まで産ませたのに、その子供に帝国を乗っ取られる。人々はそれを喝采しているのだ。